WISCの検査には「数唱」という課題があります。
検査者が読み上げた数字を聞いて、
- そのまま言う(順唱)
- 逆から言う(逆唱)
- 小さい順に並べて言う(数整列)
という方法で答える課題です。
保護者への説明では
「数唱が少し弱いですね」
と言われることがあります。
すると
「記憶力が悪いということですか?」
と心配になる方もいます。
しかし、数唱で見ているのは単純な記憶力だけではありません。
数唱で見ている力
数唱では主に
ワーキングメモリー
が関係しています。
ワーキングメモリーとは
「一時的に情報を覚えながら、同時に処理する力」
のことです。
たとえば
- 聞いた内容を覚える
- 順番を入れ替える
- 並べ替える
といったことを、頭の中で同時に行います。
この働きが必要になるため、
数唱の結果はワーキングメモリーと関係することが多いのです。
▶【WISC】ワーキングメモリーが低いと言われたときの考え方
順唱・逆唱・数整列の違い
数唱にはいくつかの種類があります。
順唱
聞いた数字をそのまま言います。
例
3 − 8 − 2
↓
3 − 8 − 2
これは主に
短期的な記憶
に関係します。
逆唱
聞いた数字を逆から言います。
例
3 − 8 − 2
↓
2 − 8 − 3
これは
- 覚える
- 順番を入れ替える
という処理が必要になるため、
ワーキングメモリー
がより強く関係します。
数整列
聞いた数字を
小さい順に並べて言う課題
です。
例
3 − 8 − 2
↓
2 − 3 − 8
これは
- 覚える
- 並び替える
- 正しい順序で答える
という複数の処理が必要になります。
園や学校ではどう見えるか
ワーキングメモリーに負担がある場合、日常生活では
- 指示を最後まで覚えていられない
- 説明を聞いても途中で分からなくなる
- やることが途中で抜けてしまう
といった様子として見えることがあります。
園で
「先生の指示が通りにくい」
と言われる背景にも、こうした特徴が関係していることがあります。
▶【園で「先生の指示が通らない」と言われたとき】WISCの結果から考える理由と支援
保護者からよくある相談
数唱が弱いと言われた保護者からは、
「家では普通に会話できるのに大丈夫ですか?」
「覚えが悪いという意味ですか?」
「勉強についていけなくなりますか?」
といった相談を受けることがあります。
数唱は単純な記憶力だけを見ているわけではありません。
特に逆唱や数整列では、覚えた情報を頭の中で操作する力も必要になります。
そのため、数唱が苦手でも、言葉の理解や知識量が十分に高い子どももいます。
結果を見るときは、数唱だけで判断するのではなく、他の指標や普段の様子と合わせて考えることが大切です。
数唱が弱い=問題というわけではない
WISCの結果は
「できないこと」を決めるものではありません。
子どもによって
- 言葉の理解が強い
- 視覚的な課題が得意
- 推理が得意
など、さまざまな特徴があります。
そのため、数唱の結果だけで子どもを判断することはできません。
大切なのは
どんな場面で困りやすいのかを理解すること
です。
WISCの結果は、その手がかりになります。
例えば、聞いた指示を一度にたくさん覚えることは負担でも、メモや見本があると力を発揮できる子どももいます。
WISCは「できる・できない」を決める検査ではなく、「どんな環境なら力を発揮しやすいか」を考えるためのヒントになります。
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